Krystian Zimerman

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About this artist

このピアニストについて語るとき、必ずと言っていいほど「完璧主義者」という言葉が使われる。18 歳で史上最年少のショパン国際ピアノ・コンクール優勝を果たして以来、スター・ピアニストとして華々しく活躍してきたツィメルマンだが、21 世紀に入ってからは録音から遠ざかる時期がしばらく続いた。しかし近年再開し、透徹したピアニズムで円熟の境地を聴かせてくれている。ツィメルマンは 1956 年、ポーランド南部のザブジェに生まれた。カトヴィツェ音楽院でアンジェイ・ヤシンスキに師事。そして 75 年、ショパン国際ピアノ・コンクールで優勝し、一躍世界の注目を浴びる。ポーランド人の優勝は 55 年のアダム・ハラシェヴィチ以来の快挙であった。録音は 76 年以来、ドイツ・グラモフォンの専属としてリリースされている。カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団と録音した『ショパン:ピアノ協奏曲第 1 番・第 2 番』(78 ・ 79 年録音)は高く評価され、優れた「ショパン弾き」としての才能を世に知らしめた。さらに故国を離れ、西欧諸国や北アメリカで活躍するようになると、彼のピアノはより洗練味を増していく。初来日は 78 年。絵に描いたような美青年だったこともあり、日本の女性ファンからはアイドル的な人気で迎えられた。80 年代は、巨匠指揮者との協奏曲録音を含め、綺羅星のようなアルバムの数々を世に送り出した。23 歳のツィメルマンが、同世代のポーランド人ヴァイオリニスト、カヤ・ダンチョフスカと組んで録音した『フランク:ヴァイオリン・ソナタ、シマノフスキ:神話他』(80 年録音)は、これらの曲の最上の演奏として名高い。ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との『シューマン&グリーグ:ピアノ協奏曲』(81 ・ 82 年録音)、レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との『ブラームス:ピアノ協奏曲第 2 番』(84 年録音)も名盤である。バーンスタインとはベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の録音を進めていたが、第 1 番と第 2 番の録音を残してバーンスタインが世を去ってしまったため、第 1 番と第 2 番のみツィメルマンの弾き振りによって録音された。90 年代に入ってからのソロ・アルバム『シューベルト:4 つの即興曲』(90 年録音)、『ドビュッシー:前奏曲集第 1 巻・第 2 巻』(91 年録音)での磨き抜かれた表現も素晴らしい。ポーランドを代表する作曲家ルトスワフスキがツィメルマンに献呈したピアノ協奏曲を、ルトスワフスキ自身の指揮で録音した『ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲』(89 ・ 90 年録音)もまた歴史に残るアルバムである。ツィメルマンはショパンの没後 150 周年にあたる 99 年、『ショパン:ピアノ協奏曲第 1 番・第 2 番』をふたたび録音した。優秀な若手奏者を選抜してツィメルマンみずからが組織したポーランド祝祭管弦楽団を弾き振りしての録音は、彼の完璧主義者ぶりが最大限に発揮されたものであった。しかしその後、録音に対して慎重になっていったツィメルマンは、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との『ブラームス:ピアノ協奏曲第 1 番』(2003年録音)を最後に録音活動を休止してしまう。理由はアルバムの録音・制作側への不信感ということだったが、ライヴ録音さえもリリースされない状況が数年にわたって続いた。その間もコンサート活動は変わらず続けていたツィメルマンが、ふたたび録音に戻ってきたのは、ポーランドの女性作曲家バツェヴィチのトリビュート・アルバム『バツェヴィチ:ピアノ・ソナタ第 2 番、ピアノ五重奏曲第 1 番・第 2 番』をダンチョフスカら同郷の弦楽奏者たちと録音した09 年のことだった。その後、ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と『ルトスワフスキ:ピアノ協奏曲、交響曲第 2 番』(13 年録音)をリリース。ルトスワフスキのピアノ協奏曲は 89 年以来の再録音だった。日本をこよなく愛すツィメルマンは、16 年に 25 年ぶりとなるソロ・アルバム『シューベルト:ピアノ・ソナタ第 20 番・第 21 番』を日本で録音した。07 年に発生した中越沖地震の復興を祈念したコンサートを柏崎市で 08 年に行ない、柏崎市に義援金を寄付したツィメルマンは、その際、復興のシンボルとして建設される新しいホールでのコンサートを約束した。そして、15 年 11 月に柏崎市文化会館アルフォーレでのコンサートが実現し、その音響の素晴らしさに感激した彼は、ここでシューベルトのアルバムを録音したのである。18 年のバーンスタイン生誕 100 周年には、ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と『バーンスタイン:交響曲第 2 番《不安の時代》』を録音した。ツィメルマンは以前バーンスタインとこの曲を共演した際、「私が 100 歳になったときにも《不安の時代》を演奏しよう」と約束していたが、その約束が 30 年のときを超えて別の形で結実したのだった。世界最高峰のピアニストとして巨匠への道を歩むツィメルマンは、フランスのレジョン・ド・ヌール勲章受賞(05 年)、ポーランドにおける民間人の最高勲章である星付きコマンドルスキ十字勲章(13年)など、栄誉ある名誉博士号や勲章を受賞している。